強風下のレーザー初乗り

 若洲のヨット教室に通って
レーザーのラジアル艇に乗艇し始めていたある日のことだった。

 風はいつもよりは強かった。白波が立ち始める程だった。
いつものようにスナイプ艇とレスキュー艇の船団の中に私一人が
レーザー艇に乗艇して訓練海域に向かいだした。
ハーバー前の風の穏やかなエリアを抜けると風が強くなった。
 すぐに沈して、沈起こししてセールを再開してもすぐにまた
沈をした。とてもセール出来そうにはないように思えた。
スナイプ艇は私の艇を置いて先に行ってしまった。

 悪戦苦闘していると、一隻のレスキュー艇が近づいてきた。
レーザ艇をレスキュー艇の横付けにした。
レーザー乗りの武藤コーチが、私の艇のバングを締め、アウトホールを強烈に引き込んだ。
「これで、大丈夫だ!」
と確信に満ちた感じでレスキュー艇に乗艇している他のコーチに話した。

 それからは意外なほどにセール出来るようになった。
結局そのまま、訓練海域まで行って、レースをやり、
無事にハーバーまで帰って来た。
 数回の沈はした。ブームの位置が下がっていたので
タックの時に頭をブームにぶつけることがあった。
けれども、一応セールは出来た。

 それ以来、風の強い日はアウトホールやバングを引き込んで
セールを薄くしてレーザーをスロープから海面におろした。
それで、何とかその日のセールが出来た。
 当時の艤装では、セーリング中にバングやアウトホールを
変更するのは至難のことだった。
出向前のセットがほとんどすべてのように思えた。

 相変わらずレースではスナイプ艇には全く歯が立たずに
はるか後方をどん尻でセールするだけだったけれども
私は操船に夢中だった。

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