悩みの種ーそれは相棒

　決して、望まなかったけれども、レース主体のヨットライフが始まった。

　レースをやりたくてヨットを始めたわけではなかったが。
レースが悩みの種ではなかった。
レースをやっていると、闘争心が湧いてくるし
たまには上位の成績に入ることもあったりして
それなりには楽しめた。
　何よりもレースでは勇敢になる。
風が強くても、
ビビってしまうジャイブも果敢にやるようになる。
技術も向上するし、セールする時のマインドも良くなる。
　若洲のヨット教室ではコーチ陣も充実していて
著名なコーチに同乗してもらって指導を受けたリ、話を聞いたりできた。
　スナイプは本格的なレース艇で申し分ないものだった。

　それでも、不満を持つことが多かった。
それは、相棒のことだった。
私には、決まった相棒がいなかった。
教室のコーチが相棒を紹介してくれたこともあったが
長続きはしなかった。
　それで、教室に行ってレースを始める前に
毎回、教室の方で相棒を紹介してくれた。
　その、相棒は様々だった。
経験豊富な人もいれば、初心者の人もいたりした。
性格が合っていて、経験豊富な人と同乗できれば
非常に楽しいレースができた。
　けれども、性格の合わない人と同乗すると
最悪だった。セールしていて険悪な雰囲気になったこともある。

　若洲のセーリング仲間で長続きしているのは
大抵、決まった相棒を持っている人だった。

　そうした悩みを抱えていたが、
シングルハンド艇に乗ることでその悩みから
解放された。

　レーザーのラジアルではスナイプには全く歯が立たず
レースをやってもいつも最下位だった。
レースを完了することすらできないで、
「レーザー艇、レースを止めて、スタートラインに戻ってください！」
と本部艇からのアナウンスがあり、次のレースに臨むことが多かった。
　それでも、レーザー艇の操船に夢中になり
飽きることはなかった。
シングルハンド艇で、一人ですべてをやるので操作は忙しい。
不安定なレーザーは簡単に沈したので
いつも、それなりに緊張してセールしていた。

　セールを終えると満足感があった。